高齢者の運転をやめさせる法律はある?警察や家族が免許停止する流れ

高齢ドライバーによる事故が相次ぐ中、「親の運転が心配」「どうしたらやめさせられるのか」と悩む家族は少なくありません。本人が自ら運転免許を返納することが理想ですが、現実には危険運転や認知機能の低下を自覚できず運転を続けてしまうケースもあります。では、法律によって高齢者の運転をやめさせることは可能なのでしょうか?この記事では、現在の道路交通法に基づき、警察や家族がどのような流れで免許停止や取り消しを促すことができるのか、制度と現実の対応策を詳しく解説します。
高齢者自身による免許返納とは?
高齢ドライバーが自ら「もう運転は無理かもしれない」と感じたとき、自主的に免許を返納する制度があります。道路交通法では、有効な免許を持つ高齢者が公安委員会に取消申請を行い、免許証を返納できると定められています。返納後には「運転経歴証明書」が発行され、公共交通割引など各自治体の支援も受けられます。家族や代理人による申請も可能で、本人が窓口へ行けない事情がある場合には、親族や成年後見人らが代行申請できます。
警察による運転停止・取り消しの仕組み
75歳以上の認知機能検査による対応
75歳以上の免許更新では、認知機能検査が必須となり、「認知症のおそれあり」と判断された場合には、医師による診断書の提出や臨時適性検査が求められます。医師が認知症と診断すれば、免許は「停止」または「取り消し」の処分が下されます。
違反歴や事故を起こした高齢ドライバーに対しても、公安委員会から臨時認知機能検査の通知が送られ、1か月以内の受検が義務付けられています。これを怠れば免許停止や取り消し処分となる可能性があります。
病気や障害を原因とした免許停止・取り消し
高齢者に限らず、認知症やてんかん、意識喪失などの病歴がある場合、医師や家族の相談により、公安委員会から運転への懸念が共有されることがあります。安全運転相談窓口(#8080)を通じて相談すると、必要に応じて診断書の提出を命じられ、症状が運転に影響すると判断されれば免許停止や取り消しに進みます。
家族や第三者が関与して運転を止める流れ
家族が「親の運転が危ない」と感じたら、まずは都道府県警察の安全運転相談窓口へ相談するのが第一歩です。ここでは医療専門職員が対応します。相談の結果、医師診断書の提出命令が公安委員会から出され、本人が診断を拒む場合でも、診断書の未提出が理由で免許停止・取消の行政処分が下るケースがあるため注意が必要です 。
制度上の流れをまとめた比較表
シーン | 法的対応 | 処分の流れ |
---|---|---|
自主返納 | 自主的 | 本人や代理が取消申請→免許証回収→運転経歴証明書交付 |
更新時・認知検査 | 義務 | 認知症の恐れ→医師診断または適性検査→停止・取消処分 |
違反・事故後 | 義務 | 臨時検査通知→検査未実施→停止・取消処分 |
病気・障害 | 任意相談 | 医師診断書提出→公安委員会判断→停止・取消処分 |
現役世代と高齢者本人が把握すべきポイント
現役世代にとっては、「家族の身に何かあってからでは遅い」ことを自覚し、早期に相談窓口や医療機関に繋げることが重要です。一方、高齢者本人にとっては、更新で「認知症の恐れあり」が出た時点で、自ら運転の限界を見極めるきっかけになります。家族が診断書提出命令を受けるよう促し、結果が出れば無理なく“辞め時”を決断しやすくなります。
法律による運転やめさせ制度は実は多層構造
日本では自主返納だけでなく、認知検査、臨時検査、医師診断、公安委員会処分など、多様な制度が重層的に組み合わさっています。家族や第三者による相談→診断書提出命令→免許停止・取消という流れが整備されており、「黙って運転を続ける」ことは難しくなっています。道路交通法に基づく合法的で合理的な措置を理解し、自分や大切な人を守るために、早めの対応を検討しましょう。