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高齢者の運転免許更新、健康診断で落ちることはある?

高齢者の運転免許更新、健康診断で落ちることはある?

高齢者の運転免許更新では、認知症の検査が義務づけられていますが、実際には認知機能以外の健康状態によっても運転に支障が出る場合があります。糖尿病や心疾患などの持病を抱える高齢者が増える中で、「意識を失ったらどうするのか」「反射神経が衰えて事故を起こさないか」と心配する家族は少なくありません。この記事では、高齢者の免許更新時にどのような健康状態が問題視されるのか、制度上どのように運転の可否が判断されるのかを詳しく解説します。

高齢者の免許更新における健康診断の位置づけ

高齢者の免許更新では、75歳以上を対象に「高齢者講習」や「認知機能検査」が行われています。これらは記憶力や判断力の低下を確認するための検査ですが、身体的な健康状態や持病に関する医学的な診断は基本的に義務づけられていません。

ただし、運転中に意識を失うような病気を持つ場合には、道路交通法第103条に基づき、運転に適さない可能性があると判断されることがあります。この判断は医師の診断書に基づいて行われ、場合によっては免許の停止や取り消し、または更新の拒否につながることもあります。

意識消失を伴う病気と免許の可否

高齢者に多い心臓疾患、脳疾患、糖尿病、てんかんなどは、一時的な意識消失や意識障害を引き起こすことがあります。運転中に意識を失えば重大な人身事故に直結するため、これらの病気を持つ人は「運転に適しているか」を医師が慎重に判断する必要があります。
特に、てんかんや重度の低血糖発作を繰り返す糖尿病の場合、医師の診断書で一定期間発作がないことが証明されない限り、免許の更新が認められないことがあります。また、脳卒中後の麻痺や視野欠損が残っている場合も、安全に運転できるかどうかが問題となります。

反射神経や身体機能の衰えも見逃せない問題

年齢とともに、反射神経や視力、聴力、筋力などが低下していきます。これらの身体機能の衰えは法律上の更新拒否理由には含まれませんが、実際の運転能力に大きく影響します。
高齢ドライバーの事故原因として多いのは「ブレーキとアクセルの踏み間違い」や「交差点での右折判断ミス」など、反射的な対応の遅れによるものです。免許センターでは、こうした身体機能低下を考慮した高齢者講習の中で運転実技を行い、講習結果によっては「運転に不安がある」と判断されることもあります。しかし、それでも最終的に更新を拒否されるケースはまれで、本人の自覚や家族の判断が大きな鍵となります。

医師の診断が免許に影響するケース

道路交通法では、運転に支障を及ぼす病気を持つ人が医師の診察を受けた場合、医師は必要に応じて警察に「運転に適さない可能性がある」と報告できる制度が設けられています(医師の任意通報制度)

この通報に基づき、公安委員会が免許保有者に対して運転適性の審査を行うことがあります。医師が「運転を控えるよう助言したにもかかわらず運転を続けている」と判断した場合、免許停止や取り消しの措置が取られることもあります。

家族ができるサポートと説得のポイント

法律上、家族が直接的に免許の更新を止める権限はありません。しかし、家族として安全を守るためにできることはあります。
まず、かかりつけ医と相談し、持病が運転にどの程度影響するかを具体的に把握することが重要です。そのうえで、高齢者本人に事故のリスクを冷静に説明し、運転以外の移動手段を一緒に探すことが大切です。公共交通の利用、家族の送迎、地域の移動支援サービスなどを組み合わせることで、運転を手放しても「生活の自由を奪われた」と感じないよう支援することができます。

まとめ

高齢者の免許更新において、健康状態は無視できない要素です。認知症検査だけでなく、意識消失を起こす病気や反射神経の低下なども、事故防止の観点から重要なチェックポイントです。制度上は本人の自主的な判断に委ねられている部分が大きいものの、家族や医師の支えによって安全な選択を導くことができます。高齢者と家族が互いに納得しながら「安全な暮らし」を守るために、今一度、運転と健康の関係を見つめ直してみてはいかがでしょうか。

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